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/特集記事・欧州買い付け日記

ロンドン買い付け便り、(2007/11/12〜19)

ロンドンだより02

半年ぶりに降り立ったロンドンは、思ったよりも寒くなく、重たく垂れ込めた、
灰色の冬空を見上げると、、ロンドンにやってきたと言う想いが、湧き上がる。
バブルの絶頂期を迎え、繁栄を極める大国に、チャンスはあるのか?
今度は、至上最短の買い付け。それでも、どんな物に出会えるのか、胸は躍る。
この想いに駆られて、20年・・・
又、無我夢中の買い付けの幕が開く・・


一日目(水曜日)

時差で深夜に目が覚める。20年間変わらず、何故かいつも必ず、2時。
日本は午前11時・・。ちょうどいい時間。日本に連絡を入れる。
誰もでない・・・?あっ、そうだ、今日は定休日だったんだ。
いつものように、そのまま起床。はやる想いを押さえて、朝を待つ。
午前5時半、少し早いけれど、、マーケットへ・・・。まだ、暗い・・・。
「目が物に飢えている・・。」買い付け初日は、いつも思う。
ひとつのエリアに7,8件、点在するマーケットを、つぶさに見て回る。
掘り出し物を次々にゲット!気持ちが高揚していく。みんな顔見知りの
業者ばかり。鞄からごそごそと、包みを取り出し、見せてくれる。
すごいものではないけれど、物を大事にする大国、古くて、面白いものに
出会えて、幸せな気持ちになる。至福の時・・・・。夢中になって、歩く。
ふと、気が付けば、もう、お昼も近い。知り合いのお店で、ちょっと休憩。
日本からのお土産を餌に、お昼をいただく。ご馳走になってしまう。
悪いわ、ご馳走になってしまって・・。」言ってる自分の中にオバちゃんを見る。
どこに宝が隠れているか、チャンスが転がっているか、分からない。
高そうな店も、遠慮せず(実は、ドキドキ)一軒一軒、必ず見て回る。
あっという間に、夕方になってしまう。満足、満足。大きな中国製の
チェック袋二つに、収穫品を詰め込み、引きずりながら、帰宅の途に着く。
収穫の喜びは、荷物の重さをも、半減してしまう。不思議・・・。
一日目終了・・・。思えば、朝6時から夕方5時まで、働くこと、11時間。
肉体疲労は、ピークに達しているはずなのに、元気。
あっ!そういえば、今日の収穫品から、DMのメインになる品を選んで、
写真撮影をし、日本に送るという宿題があった!どうしよう?
宿題を翌日にまわすのは、小さいときからの癖。人間、そうは、変われない。
取り敢えず、今日はよく働いた。明日のことは、明日考えよう・・・・。
ちょっと早いけれど、おやすみなさい・・・・。

ロンドンだより01


二日目(木曜日)

深夜2時半起床。日本は、午前11時半。会社に連絡を入れようと思ったが、
まだ、定休日。一週間に2日も休み?お客様の気持ちが、少し分かる。
宿題を思い出し、収穫品の包みを解き始める。これだったかな?
外からじゃ分からない。人間の記憶なんて、いい加減。特に私。
包みの新聞が乱雑に山となる。フランスの女の子のランプは、どうだろう?
可愛くて、躍動感があったはず・・・。やっと見つけて、眺める。うん、いい。
イメージが広がる。しかし、結局、ホテルの部屋。新聞紙とバブルペーパーが、
創作活動の邪魔をする。いい考えが浮かばない。思いあぐねて、PCを開ける。
地方を回っているディーラーから、朗報。エナメルのすごいステンドグラスを
見つけたという。買うか、買わないか、急ぎ連絡をくれとの事。写真を見て
仰天。久しぶりにすごい。価格を見て、仰天。こんなにするの?欲しいけれど、
価格は重要。日本はバブルじゃないんだから。価格交渉を頼み、返事を待つ。
気が付けば、朝。今日は、マーケットも無いので、修理屋に行ったり、買い物
予定。とにかく出掛ける。写真撮りの件、頭の隅に置いたまま、用事を済ませる。
ウェストエンドは、もう、すっかりクリスマス。街がイルミネーションで溢れている。
昼食で、ホテルに帰る。物価が高いので自炊。再度、用足しに出る。素敵な
包装紙を見つける。ひらめいた。これをバックに写真撮ろう。写真を撮るために、
帰って、まず、掃除。山のような新聞紙の中に隠れていた書類を見つける。
用事は増えていくばかり。メールの返事もしなきゃ。紅茶も買わなきゃ。
再度、出動。戻ったら、7時を回っていた。写真撮りのため、家具を移動する。
椅子や物干しを利用して、セットを組む。いい写真が撮れそうと思った矢先
被写体の女の子のランプの灯りが点かない事に気づく。電球が入っていない。
再度、出動。電球を探して彷徨う。日は落ち、街中のイルミネーションは、夜空に
映え、イギリスの経済の隆盛を、実感。かつて、6時に閉めていたデパートが、
夜9時迄、更に日曜まで、開いているという。バブルだ・・。
写真を夢中になって、撮っているうちに、深夜2時になってしまった。まあまあ
いいんじゃないかという写真が撮れた。あっ、しまった。
今日のマーケットは、早い。3時間しか寝られない。とにかく、早く寝なくては。
おやすみなさい。

ロンドンだより03




ロンドン買い付け便りⅡ・・・


三日目(金曜日)

しまった、寝過ぎた。昔なら、朝4時には、この早朝マーケットに着いていた。
もう4時半。夜中にやってた宿題の余波だ。さっき、寝たばかりな気がする。頭が重い。
身体に鞭打って、出掛ける。バスを使うのが、賢明。収穫も見込めないのに、タクシー代
の出費は厳禁。昔は、掘り出し物のメッカだった。近くに駐車中の車の窓が割られ、
その後すぐに、マーケットに盗品が並ぶ。泥棒市だけに、チャンスもある。けっこう、
好きだったマーケット。数年前から、縮小の一途をたどっていると聞いてはいた。
真偽は、不明。2年ほど前に足を運んだのが、最後。話も聞かない。やっているのか?
最近、ある御夫妻から、イギリス旅行の際、足を運んだと聞いた。興味が湧いた。
バスを何度も乗り継ぎ、やっと到着。広場が、ビルになっている!どこでやってる?
看板を発見!建築中のビルの一階、まさに建設現場の中。コンクリートの粉で靴も鞄も、
白くなる以前の5分の1もない。でも存在してた。懐かしい顔が並ぶ。
しかし、特別な品は無い、見るのに、以前ほど、時間は掛からない。
バスで来て正解。何も無い。帰るかと思った矢先、
ステッキに目が留まる。象牙の取っ手に昆虫が、盛り上がり彩色されている。
サインは、日本人?
読めない。(鑑定団の安河内はすごい!どんな達筆なサインも読む)
売ってるオジさんは、19世紀の有名な日本人のジュエリーデザイナーだと言う。
「シバヤーマ」を連呼。サインは読めないが、柴山と書いてない事だけは分かる。
残念!彼自身、気に入ってる。交渉の余地がない。ねばって
一割の値引きのみで、購入。いくらなんでも、手ぶらじゃ帰れない。
じっくり眺める。いい仕事がしてある。


弾みで、ついでに、銀製品も買う。またまた、バスを乗り継いで、帰途につく。
ジュエリーの修理屋に寄って、紅茶を買って、3時に戻る。もちろん、自炊。
おじやを食べて、ちょっと、横になる。夕方、昔の取引先の
ロンドンの姉でもある田中靖子さんとの会食が待っている。
久しぶりに会える。楽しみ!7時の約束が、都合で8時になる。
駅で待ちながら、寝てしまった。
女同士のおしゃべりは、きりがない。タイムフライズ・・。楽しいと時が飛ぶ。
11時帰宅。頭のどこかに明日の早いマーケット。忘れているわけではない。
とにかく、寝ます。おやすみなさい。

ロンドン買い付け便り四日目、五日目、最終日!

ロンドンだより04

四日目(土曜日)

綾香の「三日月」が、聞こえる・・・。いい歌だなあ。「頑張っているからね!」
うん、うん。そう。それにしても、ちょっと、ボリュームが大きい。
何だろ?ああ、うるさいな!携帯の目覚まし?
突然、覚醒する。そうか、私、ロンドンだった。
えっ?午前4時30分?ああああ!すぎた!
身支度を急ぐ。昨夜の夜更かしが、祟った・・。
急がなくっちゃ!タクシーから、会社に電話。
今日のマーケットは、ロンドン最大!
あらゆるアンティークを売りたい人と、買いたい人、スリの集団までが、
ロンドン中から集まる。巨大すぎて、苦手。でも、チャンスもいっぱい!
この日しか会えない業者も多い。タクシーを降り、早速、仕事。
久しぶりね、挨拶もそこそこ、丹念に回る。
装身具類が足りない。ここでは、アイテムを絞らないと、買えない。目が散る。
あれもこれもと欲が出る。ビクトリアンの猫のフィギュアーを見つける。
20年で初めてのデザイン。高いけど購入。
道で、業者に呼び止められる。包みの中からシェード。
いい!値段を聞く。高い。目を合わせると、
ニッと笑われた。「良いだろ?」と言う顔。交渉の余地なく購入。
一枚上手だ。見透かされている。
早い時間は、あちこちで、呼び止められる。継続は力。
20年の信用は、お金では買えない。
自分で歩かずとも、品物がやってくる。ありがたい。
時々、見当違いの物がやってきたとしても。
人が増えてきた。10時を回り観光客が出てきている。終わりが近い。
急ぎ時計の業者に会う。土産の焼酎を渡す。ゴソゴソと包みを渡される。
3本の腕時計が出てきた。コンディションは抜群。
顔もいい。価格を聞き、電卓を叩く。うーん、高い!円安は痛い。
どれかをやめよう。いやいや
利益率を下げればいけるか?土産分の値引き。購入するしかない。
自分では、集められない。
道路に出ると、人人人。もう、終わりだ。「いいクリスマスを!」
挨拶し残した業者はいないか?
大きな荷物を引きずって、ホテルに戻り、ラーメンを食べる。
栄養は気になるが、外食は出来ない。
もう一つのマーケットに向かう。もちろん、バス。
アンティック屋の土曜日は長い。バスで居眠り。
長いこと探していた特殊口径のペアランプが見つかったと言う。良かった。
ランプを確認!いい!安心して、あくびが出る。
「昨日は何時に寝たの?」すかさず聞かれる。「11時・・。」罵倒される。
「金曜日の夜は、10時に寝るの!」そうだった・・。
ランプを抱えてホテルに戻る。とにかく、眠い。あと残すこと、二日。
部屋に積み上げられた荷物の山、薄れる意識の中、気掛かりは多い

ロンドンだより05



5日目(日曜日)

朝4時に、突然、目が覚めた。頭のどこかにある仕事の気掛かりが、目覚ましの役目。
足の踏み場が無い部屋。すべての品を、梱包して送ると言う現実、目を背けたくなる。
イギリスで残された時間は、48時間。その間に梱包、荷造り、
加えてあと2回も、買い付けに出る予定。正念場だ!さあ、梱包開始。
所狭し、床に散らばるポリ袋には、懸命に買い付けた品が入っている。
片っ端に新聞を剥く。汚れを取って、再度包む。
日本から持参の宅急便の箱。組み立てて、品物を納める。どこかパズルに似てる。
割れない様、知恵を絞る。何度も組み替え、バブルを詰める。
新聞紙で真っ黒に染まる指と爪。気にはなるが時間は無い。無事に届け。
割れ物の包みに祈りを込める。テープで箱を閉じる。
買い付けのすべての苦労が、箱に入る瞬間。達成感の極み。
もう午前9時。一箱しか出来ていない!
11時から市内のホールでアンティークフェアー。
交通規制があると聞き、早めに出掛ける。10時40分に到着。もう長蛇の列
日も英も、知った顔ばかり。雨が降り出す。
20年来、晴れても持ち歩く習慣になった傘が、役に立つ。待つ身に底冷えが厳しい。
続々と知った顔がやって来る。我慢の限界。やっと、ドアが開き、なだれ込む。
あれ、目が滑る。何も目に入ってこない。見えてるのに、見えないのは何故?
疲れてる?停まって、体制を建て直す。深呼吸。
小物を置いているスタンドが目に入った。
知らないディーラー。でも、悪者顔じゃない。顔は重要!
どれも、たいした品ではないけど、安くて、面白い物が多い。6点購入。
それはそれで、買い付けの醍醐味。ペースは戻るが
調子に乗って買ううちに、お金が底をつく。人生なんてそんなもの。
明日、帰るんだもん!それなりに満足して帰宅。戻って気づく、無情な現実。
散乱する新聞紙とダンボール箱。残り時間はあと38時間。
「神様お願い。間に合いますように!」苦しい時の神頼み。
寝食を忘れて、梱包に髪振り乱す。手も服も、真っ黒け。4箱目が完成、。
スーツケースの荷造りが出来たのは、午前2時半過ぎ。パジャマは鞄の中。
もう、このままでいい。寝ないと死んじゃう。明日のマーケットは、早い。
お金無いのに?明日のことは、明日考えよう。とにかく寝ます。




  

6日目(月曜日)=帰国日

目覚ましのけたたましい音に、飛び起きる。身体は、起き上がっているのに、
ボーとしている。覚醒できない。
積み上がった箱を眺めているうちに、自分の立場を理解する。
今日、帰るんだった!コーヒーを入れて、時計を見ると、
朝5時を回っている。最後のマーケットが始まる。急ぎ身支度。
積み上がったダンボール箱を見て、完全覚醒!梱包完了。よくやった。
自画自賛。とにかく、出掛ける。
最終日だからと、タクシーを奢る。タクシーから、日本に電話。
誰かに誉めて欲しいのが本音。格安の電話は、やたら番号が長い。。
皆に、帰国を待たれている事に満足。至福の時。
マーケットに到着しタクシー代の支払いに、財布を開けてびっくり!
お札が無い。小銭を集めて支払う。忘れてた!お金なかったんだ。
ATMでキャッシング。帰りと空港までのタクシー代と、ホテル代、
そして、マーケットでいくら使うかな?
アンティーク屋は、算数苦手でも、必要経費の概算は必須。
現金を手に、最後の買付け。ん?たいへん。又だ。何も見えてこない。
昨日と同じ。やっぱり、疲れ?
スタンドで500円のインスタントコーヒーを飲む。
ホントに高い。もう、荷物になるものは買えないし、
装身具だけ買い付けよう!そう決める。
いきなり、ステンドグラスが目に飛び込んでくる。
エナメルで、40cm位。5種の酒瓶が、
5枚にそれぞれ焼き付けてある。小さいものしか買わないと決めたのに!
見た事の無いものには、異常に反応するのがアンティーク屋の哀しい性。
もちろん購入。その他、装身具を数点購入して、予算クリアー。
スッテンテン。
久しぶりに会ったディーラー仲間たちと、名残りを惜しみながら、
一人ホテルへ急ぐ。やることは山程ある。
運送屋の集荷までに、あと一箱作る羽目になった。
時間は無い。ハラハラしながら、ステンドグラス5枚を梱包する。
終わったところで、集荷に来た。抜群のタイミング!出し終えて、
やっと一服。お風呂に入る。
あと1時間でチェックアウトのところ、ホテルの好意で、
空港タクシーが来る3時まで、部屋を使っていいと言われる。
すべての荷造りを終え、荷物は、スーツケースを含めて6個。引越しか?
馴染みの運転手が3時5分前に、迎えに来る。
空港まで、世間話。話しながら、知らないうちに居眠り。
やっぱり、疲れている。
空港カウンターに、ポーターと乗り込む。
荷物を預けるまでは、戦闘モード。
気掛かりだった6個の荷物も無事チェックイン。
やっと、日本に帰れる・・。
感激で、思わず涙ぐむ。何はともあれ、任務遂行!嬉しい!
きっと今日も、機内で食事が終わったら、成田まで、爆睡予定!
お疲れ様でした。
旅の成果は、24日からの新着フェアーをお楽しみに・・・・・。

ロンドンだより06

番外、帰国編!


やっぱり、着陸一時間半前まで、寝てしまった。2回目の食事、又、食べれなかった。
映画も楽しみにしてたのに・・。
どこかで聞いたコマーシャル。あれは、本当だ。同じ姿勢で寝てたせいか、首が痛い。
ボーとして、中部空港に降り立った私。
ベルトに載って流れてくるスーツケースを含めて6個の荷物が、
現実に引き戻すのに時間は掛からない。
まだ終わっていない。 手押しのカートに何とか、4個の箱を積み上げる。
好奇の目が背中に突き刺さる。そりゃ、普通の客じゃない。まるで引越し!
載り切らない巨大スーツケースと、機内持ち込みの鞄を、
サイドに引きずってのカート運転は、難しい。ヨロヨロ、ヨチヨチ。
好奇の目が、背中に張り付く。ようやく、課税カウンターへ。税金を払って、外に出る。
迎えの人たちの目線が、一斉に向く。驚きに満ちた顔。
何?あの荷物!皆の顔が言っている。
早く立ち去りたいのに、カメの様。素早く動くのは不可能。耳まで赤面。
すがる様な目線で、人の群れを掻き分け、スタッフの石川を探す!い、いない・・?
思ったより、通関がスムーズだった為に、 迎えが間に合わなかった。
電話をすると、たった今、駐車場に着いたらしい。
待つこと5分、走ってくるプードルの耳の様なお下げ髪。 千切れるように手を振る!
さっきまでの恥ずかしさが、誇らしさに変わる。人の心理は微妙だ。威張っている自分。
お互い満面の笑顔。 私からカートを奪い、動く歩道も使わず歩き出す彼女に、
逞しさを感じる。スーツケースを押しながら、追う私。息が弾む。待って!ちょっと早い。
若さの違いだ。バスの時間まで、40分もある。ホテルのレストランで、再会と帰国を祝う。
マシンガンの様に喋る。お互い、話は尽きない。
留守を、守ってくれてありがとう。感謝が溢れる。気がつけば、バスの時間。
箱2つは、彼女に頼み、残りは、バスに詰め込む。
バス利用なんてきっと誰も思っていない。
ロンドンのけちけちモード、まだ、続いてる。節約は美徳、エコにもつながる。
刈谷駅までのバス代1300円、何て、安いのかしら?
ロンドンでは、サンドイッチのランチ位しか食べられないのに。もう、ほんのちょっとだ。
買い付けの旅は、いよいよ終わりに近い。
「次は刈谷駅」バスのアナウンスに、覚醒する。
知らないうちに又、寝てた。突然覚醒しても、
立ち直りの早いのは、私の特技。もしや血圧高い?
窓から、バス停の方を見ると、母の笑顔がチラリと見えた。元気そうだ。
私を見つけて、手を振っている。ここまで、やってこれたのも母のお陰。
感謝が溢れる。ありがとう。お母さん。母の無事が、一番の気掛かり。変わりなかったね。
良かった!荷物を車に積み込み、母のマシンガントークも 今日だけは、苦にならない。
我が家に到着。全部の荷物を引き込んで、ほっとする。ようやく、旅が終わった。
忙しい旅だったけれど、良いものも買えたし、これで十分!満足感に包まれて、
久しぶりの自分のベッド。あっという間に、意識が薄れた。
明日からのたいへんさも、今日だけは、棚に上げて・・・。

*帰国後~新着フェアーを終えて・・・・*

帰国だよりⅠ


13日、日本帰国深夜、
友人から緊急メールが入り、彼女のお母様の永眠を知らされる。
80歳。 聡明で、魅力的な方。以前、泊めてもらった時の笑顔が蘇る。残念・・
ご冥福を祈る。合掌・・
いろんな夢を見た。ウロウロと覚醒する。ここは、どこ?天井が低い・・。
ん?えっ?自分のベッド?やっと、帰った実感が、身体中を駆け巡る。
頼んだまま渡英してしまった喫茶部の改装が気になる。
取り敢えず、会社の現場へ急ぐ。えっ!目を疑う!
「わずかな予算で、圧倒的に印象を変えて!」
そんな無理、私なら断る。凄い!天井に、作為無く、組まれた古材が、
巧みに目線を誘う。圧倒的。
日進の井上商会の社長のご厚意で、無茶な破格で購入した古材。買ったものの、
私には、お手上げ。G社のK氏のみ、完成の絵が見えていた。
K氏は、やっぱり凄い!開店に大きく一歩。
山積みの書類に目を通し、不在時の遅れを取り戻す。
8日間の空白。猫の手も借りたいほど忙しい。
翌日は通夜の為、大阪。一晩泊めてもらい、お葬式。別れは辛い・・。
友人の心中を想う。頑張って!
帰りの足で、大阪の取引先へ。クリスマス商戦たけなわ。
クッションなど、布類を数十点買い付ける。
新着フェアーまで、あと一週間を切っている。そういえば、荷物が届いていない。
突然、不安に襲われる。

帰国だよりⅡ


土日を挟むと、通関が出来ない。この分だと、月曜か火曜、遅いと水曜日か?
フェアーは、土曜から・・
土日は、収穫の情報を聞きに、来客が絶えない。きらきらした目、何が買えたの?
感謝に、胸が熱くなる。月曜から休業。内部はフル稼働。
荷物は着いていないが、準備は出来る。
店内の配置をすべて変えるのが アミューズ流。
重い家具を全部移動。圧倒的な模様替え。
重労働なのに、石川の指揮のもと、スタッフが 頑張ってくれる。
有難い。カフェ担当の新規女性スタッフ、コーヒーではなく、重い家具と格闘している。
運送会社から電話、火曜通関の予定らしい。うまくいって、入荷は水曜か・・。
トラブルが無いことを祈る。
クリスマス用品の価格付け、在庫分のレイアウト、その間にも、喫茶部門の工事は続いている。
忙しい!火曜日、スタッフを休ませる。今しか無い。休みは原動力になる。無駄ではない。

帰国だよりⅢ


水曜、皆、晴れやかな顔。 さあ、本格的準備が始まる。
正念場!この頃、正念場が何度も来てる?待望の荷物到着!梱包を開ける。
ロンドンで、私が包んだ品達が、次々と顔を見せる。「店長!ヴァセリン割れてます!」
頭が真っ白になる。
砕けたランプシェード。固いワインクーラーの中に、何十枚にも包まれて、
その無残な姿を横たえる。パニック。
15分呆けていた。切り替えが出来ない。ようやく、気を取り直し、準備に参加。
まだ、心の傷は癒えないが、すべての商品が、出切った。全体量が分かった!
配線する物、磨く物、手直し要る物、分類だけでも手間がかかる。
今日はこれで終わり。それにしても、ヴァセリンの割れた理由が分からない。
リフレッシュして木曜の朝。価格付けが厄介。円安で、価格がスパッと決まらない。
高い気がする。気の弱さが 見え隠れ。仕方無く石川に相談。かっかっと笑う。
やっぱり高いか?こんな時に限って、雑用的な仕事が、次々。集中できない。
あと、1日半。やれるのか?
「いつもやれてるから大丈夫!」石川の言葉は、勇気をくれる。感謝。
あっという間に時間が経つ。やることだらけで、焦りが募る。
あがいて、もがいて一日が行く。
無理して、のめって 一日が行く。あいにく本日、未熟者・・。
中島みゆきが歌う。私のことだ。明日に備えて早上がり。
明日は、徹夜になるかもしれない。家に帰って気づく。
ロンドン買い付け日記が完結していない!
フェアー前にアップしなきゃ! 下書きが保存してある。
書くうちロンドンでの日々が蘇る。
気付けば、朝4時。ベッドに入り、濃い睡眠に落ちる。

帰国だよりⅤ

夢も見ない。無情にも目覚ましが鳴る。
ヴァセリン、何故、割れた?まだ切り替わらない。
人間が小さいなあ。 最終日、祭日。フルメンバーが出勤。
戦場と化した店内に、スタッフが、走り回る。
クリスマス商品の展示、新人の仕事。頑張れ!ちょっと文化祭っぽい仕上がり?
ま、いいや。若いからね!
配線、難航している。
うちはランプ屋。配線がやたら多い。私は、今日も価格付け。
今日は、石川が、あちこち動いている。人が多いと、指揮者は忙しい。
あっという間に夕方になる。まだ、価格が付いていない。無情にも時は過ぎる。
結局、すべて、中途半端のまま、断念!翌日に持ち越し。
夜11時まで頑張ったのに!明日には、何とかなるから・・。
石川得意の根拠の無い自信。でも、ちょっと、不安がよぎる。取り敢えず帰ろう。
眠い。明日のことは、明日考えよう!いつもだ。

帰国だよりⅥ


フェアー当日、朝、5時に店に入る。
思えばこの仕事、いつも、眠さと戦っている。
ロンドンでも、日本でも・・・。
8時までに価格付けを完了させる。一時、工事中断しているカフェの部屋、
それらしくレイアウトして、今日は 休憩室として使ってもらう。
庭はどうなってる?アイアンの門が、展示されてない!新入荷の家具も場所が未決。
ランプの位置は?ダメダメ!やり直して!ヒステリックな自分が自分を、指揮してる。
あと、何分?たいへん!今日に限って、バイトは全員、用事と重なって休み。
掃除機や工具が床に、散らばっている。もう、時間が無い。
アクセサリーも出てない!カウンターが、配線でくちゃくちゃ!
皆、それぞれの場所で、懸命に、戦っているのに、時は無情だ。
脚立に乗ってランプ吊っているうちに、開店した・・。
お客さんが、トンカチ、拾ってくださる。すみません。
こんな高いところから・・。
見れば、私、エプロンのままだ。ハイヒール持ってきたのに。
又、着替えられなかった・・。
スタッフ全員、突然、接客モードにチェンジする。
客様から呼ばれる。「あれ、買います!」
売約の札が付いていく。
私やスタッフの苦労が報われる時。
アンティークは、一点もの!買い逃がせないという、気迫が伝わる。
次が無い!何年か前、こんな時代があった。
疲れているのに、幸せ。久しぶりの直接買い付けは、
お客様にも気迫とパワーが みなぎる。
何か、質問された。そうですね!と相槌を打って叱られた。
集中力が無い。でも、べらべら喋っている自分。
珍しい品から、買われていく。いつまでも、昼食が食べられない。
でも、幸せ。この日の為だけに頑張ってきた。
今後も頑張らなくっちゃ。
お客様から、次回の買い付けパワーを頂き、身体に仕舞い込む。
この感動と感謝を、忘れまい!お陰さまで、四日間、盛況のうちに閉幕。
次はいつ?と聞かれる。今はまだ、決まっていないと答えながら、
出来るだけ 早く行きたいと思う。
でも、年末までには、ステンドグラスも入ってくる。
レース類も、買ってあるのに、出せないでいる。
船便でシャンデリアも到着する。カフェオープンもある。
今度は、ゆっくりと、ネット上でご紹介していく予定。乞うご期待!

012
014


新着フェアー、たくさんのご来店、ほんとうにありがとうございました。
久しぶりの賑わいに、心より感謝しております。
今後とも頑張って、楽しい店造りをしていきますので、
どうぞ、よろしくお願いいたします。
今回のフェアーにあたり、お客様に許可を頂き、売約済みの商品、数点、
紹介させていただける事となりました。ご覧くださいませ。

011
013

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