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/特集記事・欧州買い付け日記

創業祭に向けて、またまた買い付け(2008/04/03〜10)

ロンドンだより02


ふと目が覚めると、朝、10時を回っていた。遅刻だ!慌てて、起き上がり気付た
今日は、木曜、定休日。そっか・・。もう一度、横になる。
たまには、お昼頃まで、寝てもいいかな?怠け心の誘惑にコロっと負ける。
惰眠を決め込み、布団にもぐる・・・・・。ゆっくりと目を閉じる・・。んっ?
何?一向に、眠りは、やってこない!
何て事だろう・・。若い頃は、いくらでも眠れたのに、
そういえば、スタッフの石川が言っていたっけ・・
「歳を取ると、体力が無くなって、長く眠れなくなるんですよ。
寝るのにも、体力要るんですから!」って・・。
がっかりして、ベッドから起き上がる。買い付けに行ってる時は、
座ったら最後、バスを待つほんの僅かな時間ですら、眠るのに・・・。
思えば、11月にロンドンに行ったきり、もう3ヶ月半も、
買い付けに行っていない!
凄まじいロンドンでの日々。眠気との戦いも、重い荷物との格闘も、
いつの間にか、記憶の中で、薄れている・・。
ほんとうに、うまく出来ていると思う。あのたいへんさ、感覚が覚えていたら、
二度と買い付けには、出られまい!
すっかり忘れて、買い付けの旅への期待に、又、胸が高鳴る!
嫌なことは、さっさと、忘れるのが、酉年、B型、私流・・。
(単に忘れっぽいと、人は言う?)
「忘れるから、日々、感動出来て、いいですね!」
こらっ!石川!誉めてない!

春を待つ01


さあ、決算が終わったら、4月26日の、創業祭に向けて、
またまた、買い付けに出掛けます!
今度は、ロンドンに加えて、ヨーロッパの小さな国にも、立ち寄ることにした。
目新しい物との出会いに、期待は膨らむが、初めての国は、リスクも大きい。
土地勘も無ければ、アンティーク事情も、皆無・・。
万一、何も買えない場合、経費倒れと、
精神的なショックは、覚悟の上とはいえ、相当、痛い!
どうぞ、いい物と出会えますように・・・。
航空会社のポイントを利用して、チケットを取った。
手配が遅れて、行きも帰りも、成田。
名古屋ー成田間の航空券が、手に入らない。
まあいいか、たまには、新幹線と成田エクスプレスで、
地に足が着いている分だけ事故率が低いと、母が喜ぶ。
ロンドンのホテル予約も、難航した。ずいぶん早くに予約を入れたつもりだが、
すでに満室・・・。
4階のダブルルームが、最後の5日間だけなら、用意できると言う・・。
日々、荷物が増えていくアンティークディーラーにとって、
ホテル移動は、出来れば避けたい。
その上、エレベーター無しの4階は、きつい。
重くて大きい物が好きな私には、地獄!
ロンドンの中心に立つこのホテルは、立地がよく、便利で、少々高いが
仕事で行くには、抜群の条件。取りあえず、仮押さえをして、他のホテルを当たる。
自炊設備のあるホテルは、簡単には、見つからない・・。
一週間ほど、ネットで、探していたが、
やっぱり、見つからない・・・。困り果てている所に
ロンドンのホテルから電話!キャンセルが出たと言う。
地下のコインランドリーの隣の部屋。
いい、いい、この際。洗濯に便利じゃないの!問題ないわ!
決めました!ホテルの予約確認書を見て、
感動!(でも、ちょっと、高い・・。)諦めてたのに、いい兆し!
「すごいでしょ?諦めてたのに、何か、運命的なものを感じるわ!」
親しい友人に話して、呆れられる・・。
「どうして、そうドラマチックに、考えたがるかな~?」
う~ん、おっしゃる通り、
これは、癖です。私の特徴!直りません!
何はともあれ、ホテルも取れたし、順調順調!さあ、これで準備万端!
すっかり、気楽になって、
お客様に、渡英報告している最中に、突然、ふと、青ざめた・・。
あれっ?、今回、立ち寄るヨーロッパの国から、イギリスまで、
どうやって行くの?飛行機?列車?
決めてないんじゃないの?キャー、忘れてた!
すっかり、手配済みと思い込んでいました!
何で、忘れちゃうんだろう?良かった!気付いて!
慌てて、ネットで、飛行機を探してみる。
イギリスに入るのだから、やっぱり英国航空かしら?
日本航空と、ワンワールドで、結ばれているし・・・
3分も経たないうちに、何と、たった19ポンドで、見つかった!
うん?ちょっと待って!驚いた事に、税金とサーチャージが38ポンドも出る・?
不思議だ・・・・。3,876円の航空運賃に、
7,752円の税金と燃料加算が出る・・・?
ほんとに・・・?ネットは、怖い!誰にも聞けないんだもの。
私って、とんでもない間違い、していませんよね?
こんなに安いと言う事は、何かあるに違いない!
今更ながら、疑心暗鬼・・・!
荷物、持ち込めないんじゃないかしら?
寸法制限、厳しいのかしら?チェックにチェックを重ねる。
どうやら、落とし穴は無いみたい・・・。
きっと大丈夫よね!何があっても、命までは取られまい。
腹を決めたら、女は強い!またまた、根拠の無い自信。
こうして考えてみると、ツアー旅行は、断然、気楽・。よく考えてあるものです。
まあ、いろいろありましたが、いよいよ、買い付けに発つ準備が出来ました。
3月末の棚卸、終わると同時に、出発です。




今度の戦利品達や、トピックス等等、現地から、随時、ご報告させて頂く予定です
どうぞ、ご期待ください・・・。
ヨーロッパからは、4月中旬に戻ります。
アミューズ、22周年の創立記念フェアーは、
4月26日(土)からを、予定しております。
ゴールデンウィーク中、水曜、木曜を除いて、フェアー開催しますので、
是非、この機会に、お出掛けくださいませ。


スタッフ一同、心より、お待ち申しております!

                                           (有)アミューズ     永谷 みどり



「買い付けの旅」 第一報 !
無事に成田に着きました。まずは一便



4月3日(木)
何年ぶりだろう?出張に出るのに成田空港に、飛行機を使わずに行くのは・・・。
今回は、どうねばっても、とうとう、名古屋ー成田の、飛行機が取れなかった。
まあ、飛行機が取れたとしても、中部国際を、朝9時前後の出発のため、
いつも6時に家を出なければならないので、同じ気もする!
母の言うように、空路より、陸路の方が、安心と言えば安心か・・
そう自分を慰めてみたものの、
でも、やっぱり4時起き!準備で、夜が遅かったせいか、
4時から、5分おきに3回も、仕掛けておいた目覚ましに、
気が付かなかった・・。
5時半に出掛けるのに、4時45分に起きてしまった!
うーん、縁起がわるい・・・。しょっぱなから。飛び起きて、
大急ぎで身支度!刈谷駅へ・・・。
東海道本線と、新幹線、成田エクスプレスを乗り継ぎ、東京に向かう。
スーツケースが、前日に送ってあって、助かった・・。
あんな荷物あったら、死んじゃう!
6時7分のJRに乗り、名古屋6時58分発ののぞみで、東京へ・・・。
9時の成田エクスプレスに乗って、空港へ・・。
(朝から3回も乗り換えた・・・。ふうっ・・。)
成田空港の第二ターミナルに入り、よく分からないので、ウロウロ、ウロウロ。
案内所のお世話になりながら、ようやく、チェックイン!
やっぱり、成田に入るのは、たいへん!
今度から、強がらず、どうやっても、空路を選ぼう!
たとえ、多少、危険であっても・・・。
そういうわけで、今、空港のネットカフェからです。
もうすぐ、ヨーロッパへ旅立ちます。
又、買い付けの旅が、始まり、始まり・・・。
おっと、いけない!これ以上いると、乗り遅れてしまう。
又、随時、お知らせしますので、お楽しみに・・・。
では、又。





遠足の前日に眠れない子供じゃあるまいし編 !

到着日01



4月3日(木) まだ、日付けは変わらない機内にて・・・。

シャンペンで喉を潤し、食事を頂いたら、すぐに眠る予定だったのに、
何故か、目がパッチリ!
昨夜の睡眠は、たった4時間!なのに眠気がこない・・。
初めての国に向かっているせいか・・・?
遠足の前日に眠れない子供じゃあるまいし、
そんな訳もないだろうと思いつつ、否めない自分もいる。
まあ、そのうち眠くなるだろうと、ほんの少し前の話題作、
アイ アム レジェンド にチャンネルを合わせる。
狂犬病に似た疫病で人々が死に絶え、たった一人、免疫を持ち、
生存してしまった博士の話・・。
愛犬と暮らしている・・・。入り込んだ。手に汗握って、のめり込んだ。
アメリカ映画らしい終わり方ではあったが、
何となく解決の兆しが見えて、一安心!
調子に乗って、ライラの冒険、チームバチスタの栄光と一挙に3本見た。
トマトジュースを飲んでいて、バチスタの手術シーンと重なった時は、
参ったけど、
(チョイスが悪い!)6時間ちょっとは、あっという間に過ぎた。
飛行時間は、12時間。
半分以上は、飛んだようだ。残り時間が半分を切ると、何だか焦る・・。
今回は、行った事もない国なだけに、下準備は絶対に必要!
一ヶ月前に買った地球の歩き方、まだ、折り目も付いていない。
結局、ぎりぎりにならないと読めない・・
この習慣、学生時代から変わることなく、本日に至る。
時間がないと、頭に入る。無理やりにでも入れるから?
丹念に読んだ。空港から鉄道の駅、駅から市内の移動方法、
ホテルに近い駅はどこ?そこから、どの方向へ?
スーツケースは23キロ。
もう一つのコロコロバッグは、12キロ。左右に振り分け、
石畳の道を歩けるか?
ヨーロッパ=石畳と決めている自分に気付き、苦笑い・・。
手が塞がるので、ハンドバッグは斜め掛け!
スリ対策は万全か?頭の中で、シュミレーションする。
切符の購入方法、降車駅、ホテルまでの地図と格闘が始まる。
肝心なホテルのある通りが、どうしても見つからない。
英語でも手に負えないのに、読み方も分からない国の地名、
覚えて探すなんて土台無理!少々投げやりになるが、
誰も助けてはくれない・・。気を取り直して、再度、地図を見る。
あったあ!!なーんだ!思いもかけない方角にあって驚く。
気付けば、ゆうに一時間は経っている。一人旅はたいへん。
お膳立ては、何も無い。自分で、頑張るしかない!
結局、全部書き出して、バッグに入れたところで、時間切れ・・。
一睡もしないうちに到着してしまった。何だか、それはそれで、損な気もする。
私、ないものねだり・・。あまのじゃくだ。

到着日02


空港に降り立ち、先頭集団に入って、カツカツと、肩で風きり、ひたすら歩く。
いつも思うが、空港はどこも、広すぎる。
突然、先頭のビジネスマン風の紳士が立ち止まる。携帯電話だ!
え~、困る!あなただけが、頼りなのに・・。
先頭集団のペースが落ちる。急に、みんなで、行き先に不安?、
ウロウロしている。半分に速度ダウン・・・。
看板を見ながら、何とか、入国審査まで、辿り着く。
「コンニチワ!」たどたどしい日本語で、検査官定番の挨拶が来る。
うふっ、もしかして、若く見えた?
「荷物を待つ間に、両替を済ましておきましょう。」「歩き方」に書いてあった。
両替屋の名前が違うが・・・?
旅行小切手の換金で、1000ユーロ(160、569円)が、
155,430円になってしまう。手数料を5、139円も取られた!
(こんなの、ぼったくりだ・・。)
小切手に換える時、すでに1,589円払っているのに・・・。
スリにあったと思って、諦めた・・。
さあ、外に出るぞ!緊張が走る。ウロウロしてると、狙われる!平静を装う。
タクシーで行っちゃおうかな?弱気になるが、初めての国は、すべてが、
後のための勉強!やっぱり、頑張ろう!
一足先に、到着しているはずの、友人に電話を入れる。やっぱり、出ない・・。
イギリスの携帯電話だもん。
繋がらないって!階段があったら、2個の鞄は、お手上げだ・・・。
大丈夫かな・・・。確認できない・・・。
腹をくくって、電車の乗り口に向かう。
おっと、KIOSK発見!バスのチケット綴り、買えって書いてあった。
明日早朝に、郊外に移動の為、電車の切符も、買っておかなくっちゃ!
チケット売り場を探す。ここも、広い!突然、携帯が鳴った。
<友人からだ。繋がった!
階段がどれくらいあるのか、聞いてみよう!ワーイ!
「トラブルあって、まだ、空港のチケット売り場にいるのよ」 
地獄に仏、渡りに船?
急ぎ、チケット売り場に向かうと、いたいた!嬉しい!ほっとする。
友人の荷物、航空会社が、飛行機に積み忘れたらしく、
調べてもらっていたらしい。
ホントなら、何時間も前に、いつか、空港を離れているはず・・・。
私的には、助かった!幸運な私!
不運にも、鞄の無い友人に一つ鞄を持たせ、ただ、着いて行く立場に、急変!
ホテルに向かいながら、シュミレーションと重ねる。
ずいぶん、違っている。おまけに、小さな段差が、あちこちにあった。
もちろん、石畳・・・。車輪がコツンコツンと、足を引っ張る。
乗り換えること2回、歩くこと5分、ホテルに到着!
何故か、美味しくて安いというインドネシアのお店に行った。
この国の名物ではないが、まあ、いいか・・・。
食事をしたら、猛烈に眠くなった。目を開いていられない・・・。
明日の蚤の市が楽しみ・・・。早々にホテルに戻る。もう、
瞼のコントロールが利かない・・・。
久しぶりに眠れる・・・。おやすみなさい・・・・。パチッ(消灯)

2日目01





異国のアンティークも 見てみたい!初日編


こっちは、ほんとうに寒いです。今日は、朝、6時からマーケットに行き、
思いがけない品をゲット!早起きは、三文の徳!ほんとですね!
頑張ってますが、文章を書いていると、時間が足りません。
ちょっと、ショートにしていきますね!


4月4日(金) 初めての国で、のみの市へ・・
ほら、やっぱり、2時だった!必ず、到着翌日は、朝、2時に、目覚める。
何故だろう?ずっと、謎・・。
昨夜は、10時半に寝たので、実質、3時間半しか寝ていない。
特別、目覚ましで起きたわけでもない・・。
起きたら、それなりに忙しい。手持ちのユーロ、ポンド、日本円、
金種別に、記録する。
15年くらい前にロンドンで、スリに遭い、ポリスに所持金を訊かれたのに、
全く分からず、苦い思いをしてから、どんなに忙しくても、出掛ける前に、
所持金を記録するようになった。
ノートの片面に、実際にある現金をチェックして、書き込む。
帰ってきたら、使ったお金、現金の収支、クレジットカードの使用分を書き足す。
右面には、レシートを、重ねて貼る。
面倒なようだが、けっこう、達成感があって、大事な仕事。
実際、被害届け以外にも、役にも立つ。
前回も、マーケットで、お金を払った、払ってないという、
記憶ちがいのトラブルになった時、所持金から、追跡!解決につながった。
(結局、払っていなかった・・・。あの時は、ごめんなさい・・・。平謝り。)
朝、4時をまわった。会社に連絡を入れ、打ち合わせを済ます。
しかし、こんな時代が来るとは、思わなかった。
少し前までは、海外に行っていると言えば、治外法権だったのに、
今は、瞬時に、電話が、かかる。
うーん、逃げられない!そうこうしている内に、4時半を回った。
友人に、5時に、モーニングコールを頼まれていた。
ホテルは、7~8分、離れている。
身支度を整え、電話する。うん?電話が掛からない?何で?
10分間、掛け続けたが、この電話は、使われてないと、のたまう。
自力で、起きていてくれる事だけを、祈りつつ、持ち物を整える。
コロコロバックと、中国製のチェックの袋は、必帯品。買う気満々!
とにかく、出かけようとノブに手を掛けると、けたたましいノック音。
「ちょっと!ちゃんと、起きてる?」逆に、心配された。
どうやら、私が、掛け方を間違えたらしい。
とにかく、タクシーを捜し、駅に急ぐ。
鉄道で、1時間弱の郊外の市だそうだ。
今回の情報は、友人から・・・。言わば、おこぼれ頂戴の情報である。
内容に関わらず、きっかけを作ってくれた事に感謝・・・。
イギリスのマーケットが、ダメな訳じゃないが、
たまには、異国のアンティークも 見てみたい。結果は、問題じゃない。
初めての土地に入り、空気を吸って、仕事に繋げられるのが、楽しみなのである。
さあ、着いた!人が集まっているのが、見える。
イギリスよりも、何だか、のんびりした感じがする。
みんなゆっくり、台の上に、物を並べている。
何だか、こちらも、うつってしまった。ゆっくり、のんびり見ていく。
特別、凄い物は、無いのだが、目先の違った品はある。
それは、それなりに面白いが、買うまでには至らない。
くれても要らないものもいっぱいだけど、それは、イギリスでも、同じこと。
見て回るうちに、何だかんだ言っても、結局は、イギリスにも あるものばかり、
買ってしまった。価格的には、多少安い物もあるが、
飛行機、滞在費、そんな事を考えると、果たして、安いのか?
クエッションマークがつく・・・・。
でも、たどたどしい英語が話せる人もいるので、買い付けは、何とかなる。
さすがに疲れて、早めに切り上げる。戦利品は、まあまあ・・・。
広げてみると、数は無いだろうが、まあ、何だか、満足感!
くたくたで、帰路に着く。今日こそは、早く休もう・・・・。
ホテルの部屋とベッドは、異常に狭いが、眠れればいい・・・。
荷物が、ひたすら重い・・・。それでは、又、明日・・・・。
明日は、会場に行く前にパッキングを、終えて、チェックアウト。
夕方には、ロンドンに移動となる。又、忙しくなる・・・。
とりあえず、おやすみなさい。ZZZZZ・・・・。

2日目02





異国で、最後の大奮闘・・。編


4月5日(土)  


2日目も、早起きは、続いている。今日は、午前3時起床。
どの国に行っても、同じ事してる私。
床を見て、ようやく覚醒!床いっぱいに広がった箱と、スーツケースが、
現実に引き戻す。う~ん、洗面所に行けない・・。ほんとうに狭い部屋!
気付かなかったけど、ここは、屋根裏部屋だ!
そう言えば、23キロと12キロのスーツケース持って入ってきた時、
ホテルの人が複雑な顔したっけ。
エレベーターで上がってきたら、最上階を押したのに、下の階止まり。
まるで、江戸時代の階段かと思わせる階段を、
死ぬ思いで上がったのを思い出した。
窓から眺める風景、ヨーロッパらしい屋根が連なる。
突然、気分は、赤毛のアン!狭くても、平気!何だか、
ロマンチックな気分になってきた。これも、いいかも?
そうそう、それよりも、洗面所!もう、若くはないので、
寝起きのジャンプは、避けたいが、いたしかたない。
思ったより距離があった!着地、失敗!スーツケースに足を突っ込む。
痛っ!シヤンプー踏んだ!もうっ!

赤毛のアンは、何処かに、消えた・・・。


最終日01


今日は、8時半に、出発予定。 せっかく朝食、宿泊に、ついているのだから、
一回位、食べなくっちゃ!
でも、それよりも何よりも、私は、出掛ける前に、2つの大きな仕事を、
おえなくてはならない。 出掛ける前に、昨日の戦利品達を、
日本に送る為のパッキング!スーツケースの荷造りもある。
そして、あの階段で、荷物を降ろして、チェックアウトしなくては・・・・。
突然、頭が回転を始める。 機内用荷物の重さと、スーツケースの重さの制限、
よく、確認しなくては!重量で、超過料金支払うほど 悲しい出費はない・・。
何といっても、超過料金の設定が、法外!1キロ、確か7000円!
頑張らなくっちゃ!刻々と時間が過ぎる・・。
割れ物の高価な品は、手荷物バックに。
重量物は、宅急便の箱へ。割れ物の小さい物は、箱を作って、スーツケースに・
この分類作業が、けっこう、面白い。
たいへんだけど、うまくいった時の満足感は、たまらない。
刻々と、時間が過ぎる・・。
今、ヨーロッパの夜明けは、早い!明るくなってきた。
先に身支度をする。
あとから、洗面道具入れたり、何か引っ張り出したりは、避けたい。
荷物が動くのは、致命傷になる。没頭しているうちに、朝、8時を回った。
ご飯、食べなくっちゃ!でも・・・。
やっぱり、難航した。ネックは、あの狭い階段・・・。
スーツケースが、思ったより、重い気がする。
25キロ位か?気をつけないと、私も一緒に、転がり落ちる。
踊り場で、一休み。一歩、一歩、踏みしめながら、息を詰める。
10分掛かって、何とか降りた・・・。次は、宅急便、そして、手荷物バッグ。
結局、20分以上掛かってしまった。泣く泣く食事を諦めて、チェックアウト。
凄い荷物にフロントも、驚く。
宅急便の集荷が、月曜日になってしまう為、賄ろを渡す。
これも、必要経費!鍵つきの別の部屋に、預かってもらった。

最終日02



街角のATMで、キャッシングして、友人と待ち合わせ、
もう一度、昨日の会場に向かう。ヨーロッパ大陸の鉄道の旅は、ワクワクする。
この大陸、 ロシアにも、繋がっているんだ。
いつか、列車で回りながら、いろんなアンティーク、集めながら、旅したい・・。
会場に着いた。あれっ、昨日よりも、店の数が増えている?
逸る心を、抑えながら、一軒一軒、見て回る。
ほんとうに、特別な物は、見つからないが、たまに、安い物もある。
しばらく、買い付けに没頭した。まわりが、急にざわめいた!
振り向くと、何とスターウォーズの面々が、歩いている。
総勢12人くらい?ダースベーダーもいる!
あまりのことに、ボーゼンとして、写真をとるのを忘れた。
ええーー!何、何?急に、嬉しくなった!
あまりに早く通り過ぎたのと、お昼ご飯を買う列に並んでいて、
動けなかったのもあって、シャッターチャンスを逃がしてしまった。
悔やまれてならない。そうこうしている内に、制限時間、いっぱいとなった。
友人と、ここでお別れ。私は、一足先にロンドン入りする。
最後に、もう一軒見てからと、思った矢先、
可愛い子供用のベントウッドの椅子を見つけた。猫がついている・・・。
うわあ。どうしよう。荷物は、増やせない。特に、椅子なんて・・・。
迷いながら、隣のストールを覗く。レースの可愛いカーテンが、3枚。
うっ、可愛い!!それにしても、かさばる!いつも、こうだ・・・。
そして、結局、どうにかなると思っている自分に負ける。
椅子と、カーテンで、とんでもない荷物になった・・・。
友人に別れを告げ、入り口まで来たところで、
スターウォーズのダースベーダーの手下が、二人、話し込んでいた!
荷物を、放り出して、慌ててカメラを向けたら、
すかさず、銃を向けられた!こっちに、向かって来るっ!
蚤の市と、アトラクションを、一緒に楽しんだ気がして、大満足!
さあ、急がなくっちゃ!ふと、表に、目を向けると、
バケツをひっくり返したような大雨で、あごが落ちた・・・。
どうして?こんな荷物なのに?友人に、電話する。
「ねえ、一緒に、帰らない?」笑って、断られた・・・。
傘は無理か?大きな中国製のチェックバックを左手に、
カーテンの入った袋を縛って、左肩にかけ、前後に振り分けた。
右腕に椅子を、バッグのように掛け、その手に傘と、
もう一つのスーパーの袋を持った。
駅まで、たいした距離ではないのに、肩の荷物が落ちないようにする為、
身体が不自然に曲がっている。
傘が雨の圧力に、必死に耐えている。心掛けが悪いに違いない・・・。
歯を食いしばって、ヨロヨロ歩く。駅が、こんなに遠く感じたことはない。
ジーンズは、膝まで濡れている。まるで、我慢大会だ。
10分以上掛かって、ようやく、駅に、辿りついた。
この仕事、やっぱり、重労働。たまに、割が合わない気がする・・・。
駅に着くと、少し、小止みになっていた。傘さえ要らなければ、問題ない。
とにかく、ホテルに急ぐ。それにしても、この増えた荷物、
どうしよう?宅急便に、ぶつけるしかないか・・・。
ホテルフロントの裏を借りて、荷造りのやり直し!それにしても、狭い・・・。
結局、裏は、踊り場だけしかない。
ホテルの飼い猫だろうか?何度も、様子を見に来ている。怪しいと思ってるの?
手を出したら、歯をむかれた。
横の扉が突然、開いた。パッキング中の、私のお尻に当たって、
危うく、前のめりに、地下に伸びる階段に落ちる所だった。
今度は、私が、歯をむいた。どうにか、こうにか荷造りが出来た。
もう一度、宅急便の荷物を、鍵の掛かる部屋に戻してもらう。
まだ、賄ろは、効いている。タクシーを呼んでもらう。
ようやく、異国の旅も終わりに近い・・・。
この次、来ることがあったら、きっと、一つくらい、観光地に行ってみよう。
そう想いながら、ホテルを後にした。
このまま、無事に、ロンドンに戻れるかどうか、
何しろ、19ユーロ(3,876円)の航空運賃、
何があっても、不思議は無い・・。
まだまだ、出国まで、いろいろなことが目白押し。
この先は、次の便りに、まわします。まだまだ続く、異国の旅・・・。
乞うご期待!

最終日03





異国の旅、完結編「19ユーロだもん!」編 !

完結編01




4月5日(土)  
タクシーの運転手、彫りの深い顔立ち、黒い髪に、金縁の眼鏡、
年の頃は、30代というところか・・・?
イスラム系の若者。私と同レベルの英語で、話しかけてきた。
あんなに重い荷物を、コロコロも使わず、ホテルの入り口から、
軽々と、車に積み込んでくれた。
「割れ物入っているから、気をつけて!」と言うと
驚くほど、そっとおいてくれた。人当たりのいい、真面目そうな青年。
長身のせいか、痩せているのが目立つ。
「ホリディーですか?」
バックミラーから、神経質そうな目で、こちらを、覗き込む。
「ノー、オン、ビジネス!」と言うと、意外そうな目をした。
ジーンズだからかしら?そういえば、あんなに濡れて、気持ち悪かったのに、
バタバタと、荷造りに終われているうちに、 いつの間にか乾いてしまった。
ターミナルを、聞かれる。うん?あっ、そうか・・。空港は、広い!
ブリティシュエアーウェイズの書類を見るが、書いていない。
うわー、しまった。事前に、訊いておこうと、思ったのに、忘れた。
どこに入れた?地球の歩き方!
「大丈夫です。BAですね?BAは、ターミナル3、
航空会社が分かれば、大丈夫、分かります。」と言う。
妙に落ち着いている。バックミラーの目が、少しやさしくなった。
「何の仕事ですか?」[アンティークの・・」
[ディーラー」と言いかけて、やめた。
ロンドンで、取引先に、言われたことがある。
アンティークのビジネスに関わっていると、
現金を持ち歩いているという意味になるから、気をつけろ!と・・・。
「アンティークのボタンを探しに来たの、服、作る仕事」と、うそをつく。
「ああ、そうですか、」と聞き流される。
会話が始まった。お互い、母国語ではない、英語の会話。いい勝負だ。
「学校で、英語、習ったの?」尋ねると、
「私は、タクシー運転手。毎日、外人を載せて走る。毎日が、勉強の場。
実践だから、うまくなる」と言う。
なるほどね。そりゃ、もっとも!私だって、値切り方だけは、うまい。
20年、実践の場で、鍛えてきた。
子供の数を聞かれる。「うん、いないの。」これがいけなかった・・・。
「いない?それは、ダメです。
それでは、子供をもらって、育てなくてはならない。
子供が親になって、又、その子が親になる、神様が決めた事です。」
怒涛のように、話し始めた。言ってる事は、まちがっていないが、
説教好きなのか?うん?この国は・・・・・?。
そうか、筋金入りのカソリックだ。空港に着くまで、あと何分?、
ずっと、叱られているような気分。早く、着かないかな・・。
だんだん、厭になってきた。「あなたは、子供、何人いるの?」
「あの・・、まだ、結婚していないから・・。」
急に、ひるんだ。「何だ!」ここぞと、反撃に出てみる。
「ガールフレンド、いないの?」
目元が、赤くなった。チャンスが無いと言う。
説教好きのおじさんから、恥ずかしがりやの青年に戻った。ほっとした。
空港に到着、「今度来るときは、電話してください。空港まで、迎えに来ます。」
名刺を渡された。
料金は、ぴったり40ユーロ。チップを渡したが、受け取らなかった。
珍しい・・・。
真面目なんだな・・・。
何気なく振り返ったら、タクシーの中から、手を振っていた。
一期一会の言葉がよぎる。

完結編02




まずは、、チェックイン。時間に余裕は持っている。重量が不安。
25キロはある・・・。
恐る恐る重量計にのせる・・。食べ過ぎた翌朝、体重計に乗るよりも不安・・。
27キロ!わっ、どうしよ!
超過料金4キロ×7000円!ええっっ?28,000円か?
英国航空の女性、スーツケースの取っ手に、HEAVYのタグをつけながら、
中身に壊れ物は、あるかと聞く。
あるある!割れ物シール貼ってと頼み、祈る気持ちで、
超過料金の請求を待つ・・。
「良い旅を!」搭乗券を渡される。えっ?罰金無し?それでいいの?
19ユーロの切符に、27キロの荷物じゃ、申し訳ない!
喜びも束の間、目の前で、ベルトコンベアーの上で、
立ったまま送られたスーツケースが、合流地点でバタンと倒れた。
あああ!!!シェードが2つも、入っているのに・・・。
仕方ない!運を天に任せる。手荷物を抱えて、出国審査に。
切符は、19ユーロでも、支障なし!確信した。初めての空港は、楽しい!
お土産店が、軒を連ねる。あれこれ、見ながら、しばし気を抜くが、
油断大敵!得てして、空港は広い。
案内板で、ゲート確認!Hのゲートから、飛ぶようだ。
最初が、ABCD,そこから枝分かれして、左方向が、EFGH。、
最端だ。やっぱりね。ヒースローで慣れている。
まだまだ、油断は、禁物!Hゲート、確認しておかないと・・・。
もう、いやっ!町名が、変わるかと思うほど歩いた。
広すぎる・・・。Gまで来て、何と、お寿司屋さん発見!
カウンターに、外人が、鈴なり。
職人さんが、アボカドを巻いている。吸い込まれるように、座った。
オーダーを、取りに来ない。
良く見れば、みんなパックのお寿司を、開けて、食べている。
カウンター中央に、レジがあって、その前に、パックのお寿司がが積んである。
そこで買って、カウンターで食べるという、システムのようだ。
みやびというパックを買う。マグロとサーモンと巻物が、中身。
レジの人、日本人に見えるけど、用心用心!
そうでない場合も多々ある。ロンドンでは、いつも失敗! 
「ワン ミヤビ、プリーズ」と、言うと日本の方ですか?と聞かれた。
何だ、やっぱり日本人!そう思ったのよ!裏腹な私。嬉しくなった。
思わず、ビールを頼んでしまう。
出張ですか?目の前で、握っている職人さんに、聞かれる。
まさに、日本の寿司屋のカウンター!
ええ、ええ!そうです。いろいろと現地の情報、教えてくださる。
12年も、この国にお住まいとの事。情報がライブしている。
どんなお土産が、評判いいのか、どこの免税店がいいのか、つぶさに聞く。
魚は、鯖やニシンが美味しいらしい。
ニシンは、特に日本人好みらしい。
塩で漬けたものに、たまねぎのみじん切りをまぶして、頂くらしい。
レモンの酸味で臭みが消える。通常、パンに挟んでたべるとか・・・。
ハーリングというらしい。興味津々。
お礼を言って、早速、シーフードコートへ・・・。
白ワインとセットで、9ユーロ(1,440円)、お安い気がする。
うん、美味しい!ワインに良く合う。お寿司食べた後なのに、又、食べてる・・・。
ま、いいか・・。よく、働いたものね。

完結編03




そろそろ、搭乗の時間が迫ってきた。Hのゲートに到着!
私の便は、HのD02(デッキ2)と、なっている。
D02は、すぐのところにあった。思ったより近い・・。
ウェイティングルームで待つ・・・・。うん?おかしいね・・・。
飛行機がいない? あと15分で、搭乗時間なのに、飛行機がいないなんて、
有り得ない!乗客たちも集まってきている。
ざわざわとボードを見て、話している。
突然、掲示板に赤字で表示が出た。「CHANGE TO D18.GO TO D18」
デッキ18に、変わったって言ってるう・・。
そうよね!このままでは、終わらないよね!なんたって、19ユーロだもん!
デッキくらい、変わるわよね!でも、18ってことは、
16個も先のデッキってことよね?えーーーーーーーー!?口が開いて、
塞がらない・・・。慌てて、皆、移動を始める。
またまた、地の果てまでかと思われる距離を、移動。
さすがに、疲れてきた。だらだらと、行進。
ウェイティングルームにいた人達、老いも若きも、ほとんどの人が、
移動を終えた。なのに、ちょっと待って!、
飛行機! D18(デッキ18)に、陰も形もありませんけど・・・。
いいの?ここは、D18でしょ?もう、搭乗時間は、とっくに過ぎているのよ!
ざわつきが、ピークに達したところで、ついにとどめを刺された!
表示板に赤字で、「CHANGE TO D 02・GO TO D02」
もとのデッキ2に、戻れって言ってるう!!!!!!?
どれほど、遠いか、分かっているのお?????!ちょとおおおおお!
怒りが頂点に達した!こんな時、一人って、辛い!痛みを共有できない。
カッーと怒って、爆発できない。もう、もう、やだからね!
今度、移動があったら、ほんとに、怒るからね!神様、お願い、
これで、最後にしてください・・・・。
結局、動くしかない事を知る・・・・。
又、行進がはじまった。
やっぱり、19ユーロだもんね。きっと、何かあると思ったよ・・・。
トホホ・・・。とぼとぼと歩く。荷物が重い・・・。
遅れてきた人はいいな・・。きっと、D02に留まってるよね。
10分掛かってようやく、着いた・・・。
おまけに、搭乗時刻どころか、出発時間まで、過ぎている。
何だ、こりゃ?そして、重ねて驚いた!やっぱり、飛行機がいない・・・。
どうしてえ?頭が壊れた!いろんな想像が、駆け巡る・・・。
こんなときは、想像力、豊かな人は不幸だ・・・。悪いことばかり考える。
英国航空のスタッフも大きな移動カウンターを持って、動いてきた。
結局、待つこと、さらに40分、飛行機がやってきた。何の説明も無い!
みんな、辛抱強いね!凄い!結局、1時間半も遅れて、イギリスに向かった。
さすがに、疲れた。朦朧とする意識の中、
薄いパン生地にロールされたサンドイッチのようなものが配られた。
食べよう、食べようと、思いつつ、握り締めたまま、意識が薄れた・・・。
気が付いたら ロンドンヒースローに到着していた。
サンドイッチが、手の中で、温まっていた。
こんな形で、ロンドン入りするとは・・・。
明日からの買い付けがが思いやられる・・・。
異国の旅、これで、ようやく、終わりを告げた・・・。
お疲れ様!今日は、ゆっくり、休みましょ!
逸る心を、抑えて、タクシーで、ホテルに向かった・・・・。
又、意識が薄れた・・・・・。


どうしよう。3つほど、後ろの席に座ったようだ・・・編




4月5日(土)    続編・・ ロンドン到着 

[ミス!ミス!」
何か、英語で、呼びかける声が聞こえる・・・。うーん、何?誰?
タクシーの運転手が、おどけた笑顔で、ガラス越しに覗き込んでいる。
あれっ、何?現状が把握出来ない・・・。見たことのある風景、玄関・・。
突然、意識が戻ってくる。あっ、そっか!着いたんだ!
無防備にも、ロンドンタクシーの中で、熟睡してしまった。
慣れた国ならではの安心感か?
慌てて、料金を尋ねる。メーターを見ると、62ポンドの表示・・。
チップを含めて、65ポンドか・・。うっ、高い・・・・。
ここ数年で、タクシー代の値上がりが、異常な気がする。
以前は、50ポンドが、目安だった・・。
何はともあれ、慣れた常宿に到着。一安心!部屋に案内される。
今回初めての、地下の洗濯室の隣の部屋!扉を開けたとたん、
あまりの広さに、うろたえる。こんな部屋、あったんだ・・・。
ベッドはダブル!お風呂も広い!凄い!
広さは、昨夜のホテルの5倍以上!何だか、罪悪感にも似た気持ち・・。
いいんだろうか・・。こんな部屋・・・。
筋金入りの貧乏性。居心地が悪い気がする・・・。
取り合えず、荷解きをして、スーツケースを空にする。
この先、一週間、この部屋にお世話になる。
それにしても、地下のせいか、異常に寒い。
暖房をいっぱいに入れて、お風呂に入る。
さあ、又、一から頑張らなくっちゃね!
広いことはいい事だ!なのに、何故だろう?隅っこに移動してみた・・・。
あっという間に、眠気がきた・・・。不思議・・・。
何はともあれ、おやすみなさい・・・。

ロンドン編05




4月6日(日)    ロンドン買い付け初日・・・・。

暑くて、目が覚めた。喉がカラカラに渇いている。
時間を見ると、夜中の3時半を回っている。
夜明けは近い。汗をいっぱい掻いていた。4時間位は、眠ったようだ。
そういえば、寒くて、暖房、最強に掛けたままだった。暑いはず・・・。
暖房を下げて、机に向かう。
ユーロとポンドが選手交代、金種別に、ノートに付ける。
ユーロは、チャック袋に、ポンドが、主役になる。
ポンドの財布を開けてびっくり!
現金は、手持ちのたった90ポンド(18,000円)・・・。
しまった!空港で、少し現金に代えてくるべきだった・・・。
チェックは、嫌がる業者も多い・・・。
今更言っても、仕方ないが、悔やまれる・・・。
ただ、初日はどうしても、この行け行けの性格で、買い過ぎる傾向。
少し、ブレーキが掛かって、ちょうどいいのかも・・・。
気を取り直して、仕事を続ける。
日本を離れて、まだ、たった3日?何だか、もっと過ぎている気がしてならない。
それにしても、妙に、静かだ・・・。
カーテンから、少し外を覗いて、驚いた。ふわふわと、雪が、舞い落ちている。
軽くて大きな雪が、桜の花びらが舞うように、絶え間なく、降り続いている・・。
地下に伸びる階段に、真っ白な雪が降り積もって、
あっという間に、地面を、埋め尽くす・・。このロンドンで、4月の雪・・・。
20年間、見たことがなかった・・・。
時を忘れて、ただただ、見入った・・。静かに静かに、降り続く雪・・。
しばらく経って、夜が明ける気配をみせた。
漆黒だった空の色が、微妙に青く変わっていく。
白い雪と、背景のそのコントラストの美しさ・・・・。
明け方の春の雪は、あまりに、はかない・・。
降り続いていても、地に着くと同時に、瞬く間に、消えていく・・・。
あっという間に、地面を覆っていた雪が消えてしまった・・・。
吉田拓郎の、「外は白い雪の夜」の歌詞を、ふいに思い出した・・・・。

ロンドン編01


今日は、ビクトリア駅のそばで、私の好きなフェアーがある。
前回は、震えながら、長い列を作って待っている時、雨が降ってきたっけ・・。
雪は、もう降りやんだけど、間違いなく寒い。
少し、着込んでいかなくては・・。
確か、10時半にオープンだったと記憶していた。
10時半ちょうどに着いたつもりなのに、驚いた。すでに、帰っていく人もいる?
完璧に、間違えた!出鼻をくじかれる。うーん、仕方ない、
早ければいいというものでもない。腹をくくって、ゆっくりと見て回る。
「あらっ?来てたの?」「いつ、来たの?」あちこちから、声が掛かる。
一列目を見終わり、2列目で、突然、綺麗なブローチが、目に飛び込んできた!
えっ?嘘でしょ?茶色の溶け込んだ、怪しい深いブルー。
今日は、ライバルがいないの?通常なら、絶対、残っていない。
早く来た業者にさらわれるはずの、サフィライトのブローチ。
完全なオリジナル。値段は高いが、シルバーの台にセットされている。
ホールマークが入っている。チェスターの19世紀のマーク!
石を取り替えている跡もない、完璧なカボションカット、嬉しくなって即、購入!

ロンドン編04



今日は、どうやら、ついている!日本人の顔が見えない。
(私が、出遅れただけか・・・・。)
通常なら、こんなもの、残ってなんかいない・・・。
ストレスなく、買い進んでいく。今日は、小さなものばかりが目に入る。
そういえば、店のアクセサリー類の在庫が、少なくなっている。
今回は、買い足さなくてはね!夢中になって、見て回る。
気が付けば、午後2時を回っている。ちょっと、休憩・・。
一人で、お茶を飲んでいると、
4年ほど前まで、コスチュームジュエリーを、提供してくれていた、
イギリス人夫妻が、やってきた。当時は、よく面倒をみてくれて、
安くてクオリティーのいい品を、特別提供してくれていた。
ホテルまで、足を運んでくれる事もしばしば・・・。
ある時、些細な行き違いと、誤解から、ずっと疎遠になっていた。
会う事もなかったが、いつも、頭を離れない、固いしこり。
向こうも、驚いた様な表情・・。挨拶はしたものの、ぎこちない・・・。
どうしよう。3つほど、後ろの席に座ったようだ・・・。
人の中傷を、間に受けた私が、ショックで、遠慮して、疎遠になってしまった。
事実を、確かめるべきだったのに、迷惑がられていると、一方的に思い込んだ。
話すなら、今しかない!立ち上がろうとした瞬間、後ろから、声を掛けられた。
「この席、一緒してもいいかしら?」コーヒーを持って、夫妻が立っている。
驚き、慌てて席を空ける。
やさしいブルーの目が、覗き込む・・。[元気だった?お母さんも?」
心の鎖が、解けていく・・・。拙い英語だけれど、一生懸命話せば、伝わるはず!
頑張った!でも、この時ほど、英語がうまくなりたいと思ったことはない!
あっという間に、30分が、経った。昔のように、いろんな事を話した・・。
今、どんなものを買っているの?訊かれて、今日の戦利品を見せた。
「こういうの、まだ、欲しいの?」尋ねられる。
「うんうん。でも、見つからないの・・。高いし・・。」
「又、電話するね。」携帯電話の番号、変わっていないか確認をし合い、別れた。
何よりも嬉しかった!心が晴れた・・・。今日一番の戦利品になった・・・。
もう一度、会場に戻り、見残しがないか確認する。さあ、帰ろうと思った瞬間、
直径50センチはある、茶色の大皿が、目を引いた。
鶏と牡丹どう見ても、日本か中国の物。
ぽてっとした茶色で、脆そうだが、欠けはない。
ペアだが、微妙に違う。裏を返す。日本語のサイン?らしい・・。
サインとは別に、吉祥造と書いてある。縁起物ではあると確信。
価格は、とんでもない金額がついている!
イギリス人の手に負えなくなったのか、突然、半額でいいと言う。
重量に戸惑うが、やっぱり購入する。酉年は、鶏に弱い・・・。
時計を見る。3時半を回ってしまった。
もう、帰ろう。やっぱり、荷物が重い!あの皿だ・・・。
ウォータージャグも、グラスもそういえば、重いものばかり!
こんな時に限って、タクシーが捕まらない。大通りまで出る。
どんどん重さが増してきた。
やっと、タクシーを捕まえ、ホテルに帰ろうと思ったが、
ちょっと思い立って、寄り道を頼む。
タクシーの運転手が、難色を示す。理由を聞くと、
オリンピックの聖火が通るので、そちら方面の道は混むという。
あっ、そうか?今日なんだ!確か、4年前も、
パリのオペラ座の前で、オリンピック聖火リレーに出くわしたっけ!
何かと、聖火と縁があるようだ。
でも、渋滞は困る!さっさと諦めて、ホテルに戻る。
テレビをつけ、戦利品の荷解きをしていると、BBCニュースで、
聖火ランナーが、妨害されている映像が流れた。くぎ付けになった。
あれ、まあ!ロンドンは、たいへんな騒ぎだった事を知る。
現地にいると、案外、気付かないもの・・・。
これは、世界で、トップニュースになるなあ・・・。
明日は、朝4時に、ホテルを出る。ロンドン郊外のフェアー。
さあ、少し早いが、寝る準備!
聖火妨害のニュースは、つけっぱなしのテレビで、繰り返し、流れ続けていた・・・。

ロンドン編02


えっ?近づいてくる・・編



4月7日(月)

又、どこからか、かすかに、かすかに、コブクロの「蕾」が聞こえてきている。
目が覚める。
テレビでは、聖火妨害のニュースが、まだ流れていた。午前3時少し前・・・。
そう言えば、お金の収支がやっていないんだった・・。のろのろとノートを開く。
何気なく財布を開ける。小銭が、チャラリ。
ああ、今日は、お金が無いんだった・・・。そうか・・。
うん?お金が無い????
たいへん!今日のフェアーは、旅行小切手使えない!
突然、バッチリ覚醒する!汗が出てくる。
どうして現金に、代えておかなかったんだろう?
落ち着いて、よーく、考える。今日、火曜日でしょ?カレンダーを確認。
違う!月曜日だった!とんでもない勘違い。一日、間違えてしまった。
焦って損した!もうっ!
一人でロンドンで、過ごしていると、こんな事も多い。
事前に気付いただけ、ラッキーだった。
何年か前に、ロンドンから2時間も掛かる地方のフェアーに、
前日に、行ってしまった事がある。
ロンドンでのまちがいは、最悪!お金も時間も、取り返しがつかない・・。
そうか、今日は、月曜日。市内のマーケットの日。
道を隔てた隣に、24時間のATMがあるので、お金の心配はない。
このマーケットは、ロンドンで、一番寒い。
(と、私は思う)地下を、河が流れているからだという。
真夏でも、油断して薄着でいくと、凍りつく。
たまに、観光客が、紫色の唇で震えている。
まだ、午前4時か、出掛けるのには、早すぎる。
室内に、増えてきた包みの山が目に付く。
戦利品でも、見てみよっ!包みを開いていく・・。
頑張っている割りに、数が、買えてない。
買い付けのたいへんさは、一つ一つ、苦労して買うだけに、数が買えない事・・
今日は、アクセサリーと、雑貨を中心に、買いまわる予定。
ちょっと早いが出掛ける。早起きは三文の得!これは、事実です。
比較的、掘り出し物に出会う可能性のあるのが、今日のマーケット!
けっこう、ガラクタが中心。買える時もあれば、全く、何一つ買えない事もある
美術品を扱うディーラーは、このマーケットには、ほとんど足を運ばない・・。
「あなた、あんなマーケット、何の為に行くの?」
よく、同業者に言われるが、私は好き。タクシーを降りた途端、
遥か奥のストールの隅に、ぽつんと置かれた花瓶が目に入る。
視力も良くないのに、こうやって、目に飛び込んでくる時は、良い物が買える日
近寄って、手に取る・・。思っていたよりもいい物で驚く。
こんなところで、見つかる物ではない。
それにしても、売ってる人は、どこ?物を置いたまま、どこいっちゃったの?
無用心だなあ!
顔見知りのディーラーが、「トイレ!」と、教えてくれた。


そういえば、何年か前、ここのトイレで、ほんとうに怖い経験をした。
けっこう立派な公衆トイレ。
その時も、朝が早くて、まだ暗かった。男性用と女性用とは、少し離れた入り口。
長い階段が、地下に伸びている。電気も明るくて、
きちんと管理されている清潔なトイレ。
でも、早朝は、無人。L字に並ぶ個室の中で、一つだけ、扉が閉まっていた。
誰か入っている。深くは考えなかった。まだ朝の6時で、外は、真っ暗。
トイレ内に、他の人の気配は無い。
本能的に、閉まっている扉の隣を避けて、1つ飛んで、
奥の個室を選んで用を足す。
扉の鍵を開ける音がして、人が出た気配がした。
出口に向かって、遠ざかるはずの足音がえっ?近づいてくる・・。 
ん?私の真横に入った。鍵を閉める音を最後に、物音1つしない。
衣擦れの音も無い・・・。明らかに、用足しではない!
息を潜めて、こちらの様子を伺っているのが分かる。突然、空気が張り詰めた。
緊張が走る。
薄い壁一枚で分けられた個室の隣に、確かに私の動きを伺っている誰かがいる。
覗きか、物取り?手のひらが、じっとり汗ばむ・・。
どうしていいか、分からない。
喉が渇いて、息が苦しい・・。
こちらが、気付いた事を知られない方がいいのか?
わざと音を立てて、身支度を整え、いつでも、走り出せるように、
心の準備をする。心臓が、早鐘のように打っている。
もしかして、上から覗いていたら、どうしよう。
恐ろしくて、上も向けない。何か、武器になるようなものはないか、
バッグをさばく。ボールペンを握る。
いつも引っ張っている荷物用のコロコロも、投げつけたら、時間が稼げる。
神様、助けて・・。恐ろしいまでの緊張感の中、時だけが過ぎていく。
ただ、じっと、佇む。
私が、異変に気付いた事、もう、向こうには分かっているはず。
思い切って、走り出すべきか・・・。
心臓が、口から飛び出すかと思うほどの緊張感。
心音が、隣に聞こえてしまうのでは?
その時、誰かが、鼻歌まじりに、階段を下がってきた!
そして、一番、端の個室に入った!
逃げるなら今!飛び出すしかない?でも、今、入ってきた人は、大丈夫なのか?
思った瞬間、隣の鍵が乱暴に開き、人が、走り去る音がした。
ああ、逃げていった!助かっんだ・・・。
神様!急にガタガタ震えがきた。
鍵を開けて、向かいにある洗面に向かうと涙が出た。
水洗の水音と一緒に、一番端から、見たことのある現地ディーラーが出てきて、
ニコッと笑った。
彼女は、このことを知らない。この人のお陰で、助かった!
感謝しても仕切れない!
「い、い、今ね!」一緒に手洗いに並び、感極まって、話しかけた途端、、
私の心臓が凍った!
向かっている洗面の鏡の左隅で、何かが動いたのに、気付いてしまった。
濃い灰色のパーカーを着た男の、真っ黒な手が、かすかに映っている。
L字の角の壁に、背を貼りつけて、明らかに隠れているのを、
鏡が拾ってしまったのだ。
もう一人、いたんだ!?気付かぬ振りをして、急に、彼女と世間話をしながら、
出口に急ぐ!
5段ほど上がったところで、彼女の腕をつかんで、階段を駆け上がった。
訳も分からず、あまりの私の形相に、ただごとでは無い事に気付き、
彼女も、駆け上がる。息が切れるが、無我夢中で駆け上がった。
とにかく、明るいマーケットに向かって走り続けた。
50メートルほど離れたところで、振り向くと、パーカーの長身の男が、
暗闇に走り去るのが、見えた。
「Oh! Ohhhhhhh! 」それを見て、すべてを、悟った彼女が、恐ろしいほど、
取り乱したお陰で、私は少し、冷静になった。
ロンドンの公衆トイレ、特に、人の少ないところでは、油断なされませんように
話が横道に逸れたが、その後、このマーケットで、数点の掘り出し物を見つけ、
(もちろん、あの花瓶もゲット!)
幸運なことに、おまけに、明日の郊外でのフェアーへの往路、復路とも、
車に載せていただく約束まで取り付けて、
午前10時半に終了!アクセサリーも、たいした数ではないが、
気に入ったものが買えた!
マーケットのそばのAMEXで、ずっと気にしていたTCも、
手数料は払ったものの、現金化出来た。
戦利品が、たいした荷物ではないので、三越の中にある、
クロネコヤマトで、ダンボール箱2を買う。
今日は、私にとっては、一般的な買い物に当てられる日・・・。
アンティークディーラーになってから、何故か、一般的な買い物が、
嫌いになってしまった・・・。

ロンドン48


紅茶や、雑貨類など買わなくてはならない物がいっぱいなのに、
どうも、腰が上がらない。
多分、決まりきった物の買い物が、面白くないのだと思う。
だから、なるべく元気のあるうちに、買い物日を作るようにしている。
買い物リストを作って、消しこんでいく。
達成感があれば、少しは楽しくなるかもと、思うのだが、
そんなわけでもないらしい。
まあ、面倒な事は、早めにやってしまいましょうと言う訳で、今日は、頑張った!
ほとんどの買い物が済んでしまった!そして、今日の大切な仕事の1つは、
2年前に注文してあった、現代物の照明器具類をキングスロードに
ピックアップに行くことだった!
これは、前回、事前連絡を怠って、失敗しているので、
今回は、絶対、取ってこなくてはならなかったのだが、これも、クリアー!
以前の担当者が、たまたま偶然店から出てきて、鉢合わせ!
お陰で、すべてが、スムーズに運んだ。
結局、すごい量の荷物になったが、肩の荷が下りた。
アンティークの戦利品の数は、たいした量ではなかったが、
総合的に、よく、働いた一日だった。
明日は、ほんとうに早出になる。またまた、寝るには早すぎるけれど、
疲れました・・・。おやすみなさい。

ロンドン48

人間、やっぱり休みは必要です!編


4月8日(火)


目覚めると、又、電気もテレビもつけっぱなし・・。うーん、まだ3時半か・・。
ベッドに起き上がっても、頭は寝てる。覚醒までに時間が掛かる・・。
思い切ってベッドを降り、熱い珈琲を淹れて、甘いクッキーをほうばる。
今日は、ロンドン郊外のフェアー、自力で、電車で行くと、
6時半開門に間に合わない・・。
有難い事にロンドン在住のディーラーの車で、拾ってもらえる約束を、
昨日のマーケットで取り付けることが出来た。ほんとうに、ありがたい!
朝、5時45分にシェファズブッシュの友人の家付近・・・。
友人が引っ越したため、場所がはっきり確定できない。
地図を広げる。う~ん、よく、分からん・・。
以前とたいして場所は変わっていないようだが、バス停は近いかしら?
朝も早く、まだ、暗いので、そこまでバスでと思ったが、タクシーの方が無難か
お金を持っている時は、本当に気をつけなくては・・・。

ロンドン48


昨日も触れたが、これは、ディーラーの鉄則!
月二回のこのフェアーは、車でロンドンから30分程・・。
ずいぶんな数のストールが立つ。
海外(大陸)から、英語の話せない連中も、コンテナを引っ張ってやってくる。
ロンドンのディーラー達も、ほとんど仕入れに来ているので、
私が来ていることをアピールするのに絶好の場所・・・。
家具のコンテナーを、年に3回、作っていた頃は、
ビジネス相手であるデリック、ジョーンズ氏と、会場を走り回っていた。
昔は、いつ遇っても、家具を担いでいたと、
先日、ロンドンのディーラーにからかわれた。
最近は、家具のコンテナーを仕立てるのを控えている為、
家具を物色することもない。時代の流れで、ビジネスの形態も、
パートナーも変わってしまうことを、身体で知った。
この仕事を始めてから、どれだけの人が現れ、そして、去っていったことか・・
さあさあ、感傷に浸っている場合ではない。身支度を整え、いざ、出陣!(
という感じ)時間は5時少し前。ラッキー!
タクシーがすぐ捉った!行き先を告げ、車内から日本へ電話。
皆、変わりないようだが、珍しく母の体調がすぐれないとの事、風邪らしいが、
少し気になる・・。
この4月から店長就任の石川が、ほんとに頼りになる。
頑張ってくれているので安心する。
最近入ってくれた井上も、新しい風を運んでくれた。
会う人を笑顔にさせる天性を持っている。
帰国まであと一週間、力を合わせて、頑張って・・・。
何気なくタクシーメーターに目をやる。20ポンドを回っている?
高い!驚いた途端、着いた!
まだ暗いが、思ったより商店街の中だった。
危険ではなさそうだが、早く着きすぎた。
友人宅に入れてもらって待つ。ほどなくして、迎え到着の電話が鳴る。
車内では、久しぶりに、日本語の洪水。おしゃべりに花が咲く・・。
あっという間に、到着。
ゲートの前に、膨れ上がる人の群れ。その中に入って、興奮のうちに開場を待つ。
「あら、来てたの?いつまで?」
「おはよう!いい物入ってるわよ!電話するね!」
ロンドンのディーラー達から、声が掛かる。程なく開門!
なだれ込むディーラー達・・。
外は大物が多いので、家具を買わなければ、インドアから物色するのが、定例。
飛び込んだものの、今ひとつ調子が出ない。
長い間、ずっと、アウトドアから攻めていた為、
インドアの業者や、勝手がよく分かっていない。いけない、いけない!
冷静に考える・・。
そうそう、シェード持ってる人がいたっけ!走って、スタンドを見つける。
あっ!ちょうどシェードを出している!「あっ!それ、可愛い!いくら?」
業者が振り向く!急に満面の笑顔「久しぶり!来てたの?こんなのもあるのよ。」
箱の中から、出してくれる目新しい品を、物色しながら、次々に買い付ける・・。
来週ある大きなフェアーの為に、用意していたのだと言う。うーん、幸運だった!
精算を済ませ、買ったシェード達を預けて、買い進む。
すっかり、調子が乗ってきた。
次々に、小物を買い付ける。小さいものが多いので荷物は軽い。
インドアを終える。
表に出る。まだまだ勝負は終わらない。右、左と、見ながら買い進む・・。
広い・・・・。
競馬場を会場にしているだけに、外は、果てしない感じがする。
大物は、あえて見ないよう心掛ける。もし見つけても、輸送手段がない。
コンテナが出なければ、話にならない。へんに見つけると、ストレスにつながる。
家具が大好きなだけに、辛いことではある・・。
あっという間に、9時半を回っていた。3時間か・・・。
見切れてはいないが、気力が持たない。
ホットサンドのスタンドで一休み。そういえば、起きてから、クッキー一枚・・。
お腹が減ってきた。コーヒーとホットサンドを食べながら、
周りを見回せば、日本人ディーラーの顔もチラホラ、
あっ、あの人も来てる。あの人も・・・。
日本では、ほとんど会わない人でも、ロンドンでは遇う。
みんな、頑張っているんだ!さあ、私も、頑張ろう!
でも、私には、この一休みが区切りになる。
理由は分からないが、一休みして、食べ物を口にした瞬間から、
いいものが買えたことがない。
私にとっては、終わりのサインでもある。一つのジンクス・・。
さてと、立ち上がったところで、電話が鳴る。
何と、先日、久しぶりに和解して話せた、あの夫妻からだった。
この会場にいると言う。
待ち合わせて、商品を見せてもらう。さすがに、クオリティーのいい物ばかりだ。
キャリアの長さを物語っている。
十数点、買い付ける。有難いと思う。これだけの商品を探すためには、
どれくらいの労力がいることか・・・。
私の欲しいと思っている品と、量を話して別れる。
帰国までに間に合えば、連絡をくれると言う。
インドアに戻ったところで、一緒に車で来た人たちに会う。
今日は、全然、買えなかったと言う。
帰りの約束は、11時。少し、早めようと言う話になった。
電話すると、すぐに皆、集まってきた・・・。
シェードがあるので、私だけが大荷物。車のスペースに限りがある。
ある女性の膝に、やむを得ず、私の大きな鞄が載ってしまった。
ほんとうに申し訳ない・・・。
でも、助かりました。ありがとう!

ロンドン48


ロンドン市内に入ったところで、降ろしてもらい、タクシーに乗り換える。
これで、もう、ホテルに帰れる。
思えば、日本を先週の木曜に出て、ヨーロッパ大陸からイギリスと、
休むこともなく忙しい旅だった。
日本を出る前も、休めなかったし、少し休んでも、バチは当たらないよね・・・。
よく働いたもの・・・。
突然、[ハロー、ハロー」運転手の掛け声で目が覚める。
やだ、又、タクシーの中で、寝てしまった!いつもだ!
部屋に着くと、疲れが一挙に押し寄せる。塩ラーメンを作ろうと思いながらも、
ちょっとだけベッドに潜り込む。
眠りにつくのに、10秒と掛からない。まさに、枕に頭をつけた途端に、
意識を失った・・。
あまりの空腹に目が覚める。何と夜の9時を回っていた。9時間も寝てしまった!
塩ラーメンへの想いは、断ち切れていない。
キッチンつきのホテルは、便利だ。野菜をいっぱい入れて、
インスタントラーメンを作る。
おいしい!至福の時!ゆっくりと、お風呂に入り、お金の収支をきちんとする。
この時間にゆっくりと収支が出来るのは、久しぶり。身体も、少し楽になった。
人間、やっぱり休みは必要です!
そろそろ、買い付けた品もいっぱいになってきたので、整理をしたいのだが、
明日まで、梱包材と箱がない。
あっ、忘れていた!22周年のDMの為の写真撮り、締め切りは木曜日だった。
印刷会社から言われていた。
いい題材になりそうな品が、まだ買えず、手元に無い。
今日買ったシェードを引きずり出して見てみる。
これだけでは、絵にならない!思えば、綱渡りだ。
だって木曜までに、買えないかもしれないじゃない!
でも、そう思ったらそうなると、過去の偉人たちは仰る。
マイナスの思考は、買い付けの旅では厳禁!
行け行けで、買える事を信じる!もう一度、ベッドに潜り込む。
多分、こんなに長い時間、眠れるのは、この旅では、これが最後に違いない・・
水、木、金、土、日、買い付け予定は、フルに入っている!

おやすみなさい・・・。明日も早い・・・・。


ロンドン50

宿題の写真撮影しなくっちゃ!忙しいね!編



4月9日(水)

久々に、身体の隅々まで、休まった感じがする。
すっきりと、爽やかに目覚めた・・・。
もっとも、時間は、まだ午前2時40分。爽やかな朝(?)と、呼ぶには早い。
部屋の片隅から日々、その面積を広げていく戦利品の入った
スーパーのビニール袋達が、
私の仕事の成果のバロメーター。昨日から、ようやく増え始めて、ほっとする。
そういえば、明日、木曜日が、DM用の写真の入稿締切日!
明日中に、印刷屋に、写真を、メールで送らなくてはいけない。
しかし、メインの写真にしたいと思うインパクトのある品は、
未だ、買えていない・・。
今度の写真は、22周年フェアーのお知らせDMの、表紙を飾る。
いい写真を撮りたい・・。プレッシャーが、のし掛かる・・・・。
ガサゴソと包みを開けていく・・・・。
開けてみれば、シェードは、けっこう買い付けに厚みが出てきている。
新聞紙を外から触って、シェードだけを見つける。
シェードの包みだけを、すべて開けて、床に並べてみる。うーん、見事!
ヴァセリンガラスの、黄色がかったグリーンが、今にも、溶け出しそう・・・。
今日は、レベルの高いシェードが、集められる可能性のあるマーケット・・・。
私が今日、訪れることは、日本を離れるずっと前に、先方に、連絡してある。
注文というわけではないが、(注文しても、あるはずが無い!)
私の好きそうなシェードをコレクションの中から毎回、数点、持ってきてくれる。
しかし、年々、その数も減っている。
無理も無い。アンティークなんて、無尽蔵にあるわけではないのだから・・・。
いつまで、シェードビジネスを続けていけるのだろうか・・・?
不安は、ある・・・。
そうこうしているうちに、おっといけない、午前5時半を回ってしまった!
油断は禁物。大急ぎで、
イングリッシュマフィンに、ハムとチーズを挟んでトースト。コーヒーを淹れ、
朝食をすませながら、天気予報を見る。うん、天気は大丈夫!
さあ、身支度を整えて、いざ、出陣!ちょっと、出遅れた感もあるが、
まあ、いいか!
以前は、タクシーを使っていたのだが、最近はバスを乗り継ぐことに決めている。
二つ、三つ乗り継げば、必ず目的地に行ける。
ロンドンの街は、東京などと比べて、整然としていて、
巨大過ぎず、分かりやすい気がする。
大きな通りに出ると、バス停の前にあるデパートのウィンドウの掃除をしていた。
あらためて見れば、手の掛かったディスプレイ・・・。
難破船をテーマに、6つのショーウインドウが、関連を持ち、
ストーリー性を持たせて続いている。
錆色の髪のマネキンが、虚ろな目で、太い船用の鎖を握っている・・・・・。
中島みゆきなら、歌の1つも出来そうなイメージかな?
日本のデパートのウインドウでは、商品を無視して、ここまでやれない気がする。
芸術性の高いお国柄だけに、これだけ大胆にやってのけるのだろう。
見る人によって、解釈も様々だと思う・・・。
フランスとは、又、一味違ったアート感覚を、
ウェストエンドのバス待ちの時間に、誰もが、楽しめるのは、素晴らしい!
しかし、やっぱり一人旅・・・。誰とも、感動を分け合えない・・・・・。
バスを二つ乗り継ぎ、いつものように目的地に到着する。
時間はもう8時を回ってしまった。
日本からのお土産、忘れていないよね?確認しながら、チャイムを押して待つ。
いつもながらの笑顔が、重い扉の向こうで、いたずらっぽく迎えてくれた。
真っ黒な長い髪、スレンダーな黒尽くめのファッションが、
ふいに、ウインドーのマネキンとダブった・・・。

ロンドン51


トレードオンリー(業者専用)の部屋に通される。
商品は、以前来た時と、けっこう変わっている。回転がいいのが、一目で分かる。
しばらく、他愛のない雑談をしながら、それでも目は、物色を続けている。
小さなランプスタンドに、目が留まる。
エンジェルが、弓を持って、身をかがめている。
可愛いモチーフだ。スペルターと呼ばれる合金製。
サイズが小さすぎる気もするがシェードを変えれば、ずいぶんよくなる気がする
ひらめいた!コレ、DMの写真に使える!!
価格を聞く。少し高い気もしたが、まあ、背に腹はかえられない・・。
購入を決める。頭の中で、様々なDMの構成が飛ぶ。
ようやく、宿題に、メドがたって、ホっとする・・・。
東京の業者さんが、ご夫妻でやってきた。
初めてお目に掛かる。感じのいいご夫妻、
一目で、いい人だと分かる。いっぺんに好感を持った。
名刺交換をして、おしゃべりに花が咲く。
年の頃は、同じくらい?少し上かな・・・?
缶を専門に集めているという。
奥様は、猫の人形を手作りしていらっしゃるとの事。
人懐っこい笑顔が、よりいっそうやさしく見える。
何だか、ほっとするお二人・・・。
又、お目にかかりたいと思った・・・。
一緒に、そこで、お昼をご馳走になった。
ロンドンで頂くおにぎりは、格別に、美味しい!お茶、3回もご馳走になった!
荷物を預けて、一通り、そのエリアのお店を見て回る。
とびきり高級店のウインドーから、ちらっと、シェードらしきものが見えた。
私って、ハンターの様だ。思い切ってベルを鳴らす。
難しい顔の、初老の婦人。明らかに、招かれざる客という感じ!
全く、笑顔が無い・・・。
扉を開けながら、何しに来たの?と、眼鏡の奥の目が言っている。
勇気を奮って、店内に入る。「あれを見せて」と言いかけて、
それが、思っていた様なシェードじゃなく、何かの部品だったことに気付く。
気まずさが漂う・・。どうしよう・・・?うわー、困った。
他に欲しいものはないか?
目が泳ぐ・・。無い・・・。欲しいものが何一つ、どうしても無いんだもん!
冷たい視線を感じる。
腕を組んで、そばに立っている婦人は、取り付く島がない感じ。
何か、話そうとしたが、彼女を見て、悟った。早く出て行くことが、一番の得策。
何よりも彼女の望み・・・。
「THANK YOU」と言って、外に出た。笑顔を向けたら、
無情にも、バーンと、扉が閉まった。
あなたねえ、日本でそんな接客態度だったら、すぐ潰れちゃうんだから!!!!
と、悔し紛れに、日本語で言って、ちょっとすっとした。あー、もうやだ!
さすが、女王陛下の国、イギリス!
この国の、少し年取った女の人は、絶対、レディーファーストを履き違えてる。
女だからって、甘やかされて、あんなになっちゃったんだ。
こうなると、日本の、男尊女卑も良かったのかも・・・。
奇妙な結論に達した気がしたが、怒っていても仕方ない・・。
気を取り直して、買い付けに戻る。
このエリアは、高級品を探すのには適しているが、
掘り出し物と呼べるものに出会った事は無い。?
以前、このマーケットの路上で売っていた、ウエッジウッドのコンポート3点、
すごい大掘り出し物だと、自慢して書いた記憶がある。
130年以上前のマークで、型違いで、3枚買った。
普通なら3万~5万はするって、大意張りした。
後日談だが、あれのうち、一点のみ完品で、あとの2点は、大失敗だった事、
白状しておく。あまりに興奮していて、
アンティークディーラーとしての基本の基の字、忘れてしまった。
一枚は、皿の縁が、大きく抉れていて、
あろう事か、巧妙に、取れた部品が、のりで、貼り付けてあった。
そして、もう一枚は、コンポートの足部分が、割れて、無くなっていて、
真っ白な、セメントが塗りこんであった。
見逃すなんて、有り得ない失敗・・・。
近年まれに見る、天国から地獄、事件だった・・・。
一点は、まだ店にあって、私が、奢り高ぶった時の、いいブレーキになっている。
あちこち、見て回っているうちに、あっという間に、5時近くになってしまった。
荷物を預けてある店の閉店は、5時!慌てて、店に戻って、荷物を受け取る。
頼んであったダンボール箱と、エアーキャップ、大1巻き、新聞紙と、買った品物
合わせて、たいへんな量になった。ご主人に助けてもらって、
何とか、タクシーに乗り込む。すごい量で、身動きも出来ない。
見えないせいか、タクシードライバーから、時々、「大丈夫か?」と声が掛かる。
エアーキャップと、抱き合って、ホテルに着いた。
着いてしまえば、こちらのもの!荷物を持って、3往復した。
さあ、明日から、梱包作業が始まる・・・・。
そうそう、その前に、宿題の写真撮影しなくっちゃ!忙しいね!
ちょっと、いい構想が頭に、浮かんでいる。
明日は、一日、梱包と、撮影に当てるつもりだが、
夕方からは、こちらに暮らす、姉的な友人に会う予定。
私と同じ、しし座のB型。誕生日の日付が、8月14日と15日で、たった一日違い!
ずっと私の目標でもある大きな存在。
かつてのビジネス相手だっただけに、
私の苦労や、たいへんさを誰よりも理解して下さる。
歳は、私よりも少し大きいが、未だに、バレエのレッスンに通っていて、
若々しい。運動を欠かさず、スレンダーな体型を保っている。
この人との会食は、渡英の大きな楽しみの一つ。
穏やかで、やさしいのに、凛としている。
部屋に戻ると、梱包材と、今日の荷物で、足の踏み場が無くなった!
やっと、安心できた。
食事は、レトルトのカレーにサトウのご飯、カット野菜とハムを盛り付け、
ドレッシングをかける。
ほんとは、寝る前に食べちゃいけないんだけどな・・・・。
こちらに来ると、万年ダイエットの習慣が余計、甘くなる。
懸命に働いている言い訳が、立つからか・・・?食欲には、勝てない・・・。
さあ、明日の梱包に向けて、今日は、早寝を決め込む。おやすみなさい・

ロンドン53

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